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活動報告

2009年11月 のアーカイブ

2009年11月12日(木)

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11月12日。

日本経済研究センター(JCER)主催による「リーマンショック後の米国金融市場」というテーマでのセミナーを受講いたしました。講師の滝田洋一氏は日本経済新聞社論説副委員長で先ごろニューヨーク駐在から帰国されたばかりであり、リーマンショック後のホットな情報をお話されました。

 セミナーの要旨は以下の通り。

 リーマンブラザーズの破綻について、実は買い手として候補者がいた。バークレイズ銀行の子会社であるバークレイズ・キャピタル(BC)がそれである。BCは当初、ベア・スターンズ社をJPモルガンが買収したときの手法である、政府資金投入にて不良資産部分を分離、破綻していない部分だけを買い取るという手法が利用できるとの思惑であったが、他にも破綻が予想される金融機関とのバランス、優先されるGM、クライスラーなど自動車メーカーへの支援という理由により不良資産分離に掛かるコスト、約5,6兆円の支出に政府が否定的であったことにより暗礁にのりあげたことが破綻の一つの原因となっている。

 リーマンショックによる金融市場の混乱を落ち着かせるため、米国政府が行った、株の購入や社債に対する保障、コマーシャルペーパーの買取など公的支援の累計額は10.4兆ドル(約1.040兆円)と莫大なものであり、この額は実にGDP比73%にも登る。これは、英国の2.6兆ドル(260兆円)、ヨーロッパ大陸諸国合計2.3兆ドル(230兆円)と比べてもはるかに大きなものである。昨年9月以降の金融市場の混乱はひとまず収束し均衡を保っているように見えるが、その背景にはこのような巨額の公的支援によってなんとか保っているということを認識すべきである。
 このような市場に流動性を注入するという一方向の政策の実施で、リーマンショックにより大打撃を受けた金融機関はその過剰流動性による大きな収益を上げる結果となっている。Value at Market(バリュー・アット・マーケット)とよばれる金融機関がどれだけリスク資産に投資しているかを表す金額が歴史的に見て非常に高いレベルで推移している中、毎日のデータで見ても損失をこうむった日がほとんどない、言い換えれば相場を張っているのに損をしないという現状からもそれが分かる。このような環境下、巨額の公的支援の下、投資銀行などが上げた大きな収益を原資にした役員賞与などの処遇は倫理的に問題があるとの批判は再燃する可能性が高い。

 リーマンショックの影響が比較的少ないBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)や韓国において、傾向として堅調な経済を背景とした潤沢な資金が行き場を失っている。通常、このような資金は国債に回るわけだが、金利を上げることのできない(財政収支の問題や現行の金利引き上げは堅調な経済に水を差しかねない。)状況下、国債は投資妙味にないものとなっている。従って、これら資金は不動産や金に回っており、金価格は歴史上の高値を更新している状況である。

というのが概要ですが、リーマンショックにおける敗戦処理は日米において大きな傷跡を残したようで金融市場という意味でも新興国に遅れを取ってしまっているのは否めないようです。私事ですが、元国際金融マンとしてもう少し簡単に理解できる内容だろうと思っていたのですが、必死になって聞いてなんとか理解できたかなというレベルでした。金融を離れて十数年。。。国際経済に対する感覚が鈍っているなというのが正直な印象です(^^;

コメント [0]  トラックバック [0] 投稿者 : 宮本 俊
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2009年11月11日(水)

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11月11日。

 視察の二日目は山形県新庄市で福祉施設とメーカーが連携し廃トレーのリサイクルを行う山形・新庄方式リサイクルシステムの構成事業体となるNPO法人「たんぽぽ作業所」、しょうがい福祉サービス事業所「友愛園」そして「株式会社ヨコタ東北・アメニティーセンター」を訪問しました。そこで循環型社会の推進のためどのような努力が行われているかを理解し、福井県の産業政策としての環境問題解決の参考にするというのが視察の目的です。

<たんぽぽ作業所>
 指導員の星川あけみさんにお話を伺いました。同施設はこのリサイクルシステムにおいて廃トレーの回収と分別を担当しています(ヨコタ東北社の製品のみを扱っているわけではない)。集められた廃トレーは表面に貼ってあるシートがはがされ、色や形状で5種類に分別されます。
(写真左:5種類の分別 中:はがせる表面シート 右:分別作業)
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この作業を同施設にて行っていることも背景に同施設の一人当たりの工賃は2万円弱と相当高いレベルになっています。

<友愛園>
 園長の高橋聖一氏にお話を伺いました。たんぽぽ作業所で分別された廃トレーは友愛園に持ち込まれ、2台の破砕機により原料となるペレット(ビーズ)が作られます。この2台の機会はヨコタ東北より無償貸与を受けたものであり同施設のコスト構造にとって大きなメリットとなっています。同施設の定員は40名、内7名がこの作業に従事しているとのこと、この作業を受託する前は一人当たりの工賃は6、7千円だったが、この作業を始めてからは3万円弱と大幅な増加が見られた。同作業に関わる人員が施設利用者全体の一部分でしかないことを考えるとこの作業が同施設の収益源として非常に大きな部分を占めていることがわかります
(写真左:機械に投入される廃トレー 中:製品となるペレット 左:現場責任者に話を伺う私)

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<ヨコタ東北株式会社・アメニティーセンター>
 同センターの案内係、柴田いずみさんにお話を伺いながら、同社工場と併設されたアメニティセンターを案内していただきました。センターの玄関で我々を出迎えてくれたのは同センターのマスコットキャラクター「みみぃちゃん」でした。センター全体がみみぃちゃんのイラストや小物で飾られ、小さなテーマパークといった印象を受けました。お子さんにリサイクルがどのように行われているかをしっかり理解してもらうために違和感なく入れ、時間が過ごせるようこのような形態を取っているそうです。

友愛園で製造されたペレットはこの工場独自で廃トレーから生産されたペレットと共に原料となり新たにトレーが生産されます。
 同社のリサイクルトレーはリサイクル原料から生産した層をバージン原料から生産した層でサンドイッチし、その表面にはがせるシートが蒸着されているということで、全体で4層構造になっています。バージン原料による新品層がリサイクル層をサンドイッチしているのはリサイクル品が何度も何度もリサイクルされて劣化することも予想され品質保持のために表面は新品層で覆う形にしているとのことでした。製品全体の原料のうち8割がリサイクル原料から、残りがバージンの原料から生産されるとのことです。このような多重構造となることにより製品の価格は従来品より2,3割高くなるため、見込み客からいいものではあると認識はあるも導入には至らないケースが多いというのが現在の課題であるとのことでした。
 バージン原料がkg当たり約150円に対し、友愛園から買い取る原料が約半分の7、80円ほどと安いが、一般のリサイクル原料が40円ほどなので福祉施設から買い取る単価は破格の値段と言える。このことや機械の無償貸与などに同社が福祉施設を支援していこうという強い姿勢が伺えます。
(写真左:みみぃちゃん 右:廃トレーからペレットを作る工程)
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(写真左:トレーを打ち抜く工程 右:同社製品を利用した商品)
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 同社を伺って感じたことは企業とはどうあるべきかという企業倫理の強さでした。企業も利益が上げられ、福祉施設も潤い、循環型社会も推進できるというWin-Winの形を模索している同社ですが、現状は従来品の収益をこの不採算のリサイクルシステムに当てているという印象でした。連携している福祉施設に負担を掛けることなくこのシステム自体から利益を生み出すことは、特に現状のような不景気の環境下では至難の業だとも思え、この問題の解決には行政の関与しかないのではという感想を持ちました。このような環境をテーマとし、福祉施設への支援を企業への支援で間接的に行うことにより、産業、環境、福祉を総合的に支援する施策になり得るのではないでしょうか。

コメント [0]  トラックバック [0] 投稿者 : 宮本 俊
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2009年11月10日(火)

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11月10日。

 私が副委員長をさせていただいている厚生常任委員会の二日間の視察、初日は福島県郡山にある「南東北がん陽子線治療センター」とにお邪魔しました。

 陽子線によるがん治療施設としては福井県でも平成22年度末までに開設が予定されている「福井県陽子線がん治療センター(仮称)」がありますが、この施設の視察を通してセンター運営上重要なポイントや施設運営上の先進的な取り組みを理解し、福井県における施設運営上の参考にしたいというのが今回の訪問の目的で、センター長の不破信和氏、及び診療放射線科技師長鍵谷勝氏にお話を伺い、施設の案内をしていただきました。

 同施設は昨年10月にオープンし、日本で現在6箇所ある陽子線がん治療施設の中の唯一の民間施設であります。県市などの支援は受けていないものの、現在、なんとか採算割れをしないレベルのペースで稼働率を保っているが、基本的に現状の環境下でこれが伸び、病院グループ全体の収益に大きく寄与することを期待してはいないとのことでした。最先端医療の取り組みは病院全体のステータスがあがることになると考えている。
 陽子線による治療は従来のX線によるものと比べ、がん細胞のDNAの鎖を破壊する効果が強く、その元となる放射線をがん細胞にピンポイントで当てることができ、他の臓器にダメージを最小限に抑えた形で治療が行えるのが特徴です。
 同センターの患者の内訳は、福島県内が47%ともっとも多く、東京、埼玉、宮城がそれぞれ6%とそれに続いています。また、現在までの329症例を部位別に見ると頚部がんが110と最も多く、肺58件、前立腺44件、消化器27件、食道27件と続いています。一般的に動く臓器、胃や大腸には効果がないと言われているが、ケースによっては利用できる価値が十分あり、他の療法と併用して行うことによる効果が見込める場合もあるとのことでした。

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(写真下:田村委員長によるご挨拶とセンター長の不破氏)

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 同センターの治療のメインとなる施設は、1台の水平陽子線照射機と2台の回転ガントリー式陽子線照射機です。前者は主に前立腺がんの患者の治療に利用され水平方向にのみ陽子線の照射が行えます。後者は文字通り回転させることができるのが特徴で、90度回転する診療台との組み合わせで最も効果の高く、他の臓器にダメージを与えない方向から照射が行えます。元々直進性のある陽子線を水平方向に照射させる水平照射機に比べ、陽子線を磁力で数度方向転換させ照射させる回転ガントリー式照射機は大掛かりな施設となります。

(写真上段:水平照射機とその裏側の機材 下段回転ガントリー式照射機とその裏側)

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 以下、委員会メンバーとの質疑応答の内容です。
Q:現状での最新鋭の技術なのか。アメリカではもっと進んだものもあると聞くが・・・?
A:現状、安定した技術で治療法として信頼できるという意味では最新鋭のものと考えている。確かに、研究段階ではもっと進んだ技術も考えられるが、治療として利用できる段階にはないと考えている。

Q:保険適用施設との表示があったが、陽子線がん治療には保険適用されるのか。また、治療の費用はどれくらいか?
A:入院やCTなどの施設については保険適用されるが、陽子線治療そのものには現在適用はない。部位や期間にもよるが治療に掛かる費用は300万円ほど。

Q:現在の稼働率と採算ラインは?
A:オープン当初はトラブルもあったが現在はほぼフル稼働に近い。年間400~450件が採算ベースであり、現状はそのレベル。キャパシティーから考えてこれが今後、現状の施設で大きく伸びることはないと考えている。このような取り組みにより病院全体のイメージが向上、有名になり全体の患者数が増えることを目指してゆきたい。一般会計の繰り入れのある福井県立病院では300件ほどで採算ラインに乗るのではという印象を持っている。

Q:地理的なマーケットをどのように見てるか?
A:東北一円と北関東となろう。福井県立病院については金沢大学とのつながりが強いと聞いているので北陸一円がマーケットとなりうる。

 センター長との話から、先駆者としての自信と誇りが伺え、信頼性の高い施設であるという印象を強く持ちました。県内の施設利用者には県にて補助を行うことも有効ではないかとのアドバイスも頂け、有意義な視察となりました。福井にも早く陽子線によるがん治療を受けたいとセンターのオープンを待ちわびている人もいるわけで、1日も早い開設を望んでやみません。

コメント [0]  トラックバック [0] 投稿者 : 宮本 俊
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