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活動報告

2010年10月 のアーカイブ

2010年10月7日(木)

[ 活動報告 ]

10月7日。

日本経済研究センター主催による「デンマークがグリーン成長で成功した秘訣 ~デンマークの最新動向と成功要因」というテーマでのセミナーが東京大手町で開催されましたので、私も参加、お話を伺ってきました。

講師はデンマーク大使館中島健祐氏です。

要旨は以下の通り

1.デンマークに対する認識
 日本ではデンマークに対し酪農、畜産業などの農業が中心で童話作家のアンデルセンと食器のロイヤルコペンハーゲンが有名というレベルの認識しかないと思われるが、欧米からの見方はICT(情報通信技術)、バイオテクノロジー、エネルギー、環境分野において新規事業や新興技術を確立するための戦略拠点であり、世界的企業におけるグローバルなR&D(調査開発)センターであるという認識を持っている。この認識は現在では中国、インドも同様の見方をしており中国企業によるデンマーク進出や企業買収も最近顕著に見られデンマーク政府が懸念し始めたような状況である。
 人口500万余の小さな国であるがカールスバーグ(ビール世界シェア4位)、ベスタス(風力発電機世界シェア1位:日本トップの三菱重工で世界13位)、ノボ・ノルディスク(糖尿病薬世界シェア1位)、オーティコン(補聴器世界シェア2位:1位の企業もデンマーク企業であったがドイツのシーメンスに買収された)、レゴ(教育玩具)など世界的な企業が多数生まれている。

2.デンマークと日本が補完し合い、または協業できる分野
 日本とデンマークがそれぞれ方向性が違ったり、市場が存在したりということで補完し合える分野、また、同様な考え方で協業できると考えられる分野は以下の通り。
<補完分野>
               デンマーク                     日本
先進技術分野    知識集約型産業を中心に        ものづくりに大規模、高品質、
             革新的な技術               高信頼性の技術                 

医療分野      最先端の癌・糖尿病医療         癌:日本人の死因トップ

デザイン 分野    独創的なデザイン             伝統文化に基づく機能美

教育         個性を伸ばす教育             均質で高い教育水準

<協業分野>
                デンマーク                    日本
エネルギー     風力・バイオマスなど自然エネル    高いエネルギー効率、省エネ技術
            ギー技術

ICT          先進的ソフトウェア開発技術   先端を行く組みソフトウェア技術

文化         美しい自然と田舎、王室制度       まほろばの国、皇室制度

3.デンマークが成功した理由には以下のものがあげられると考えられる。
○国家ビジョンとリンクする環境政策
国家ビジョンとして明確に脱炭素社会を明確に打ち出しており、それらがその下に位置する個別の政策に明確に反映されている。「2025年に向けたデンマーク政府の新エネルギープラン」の中でも各セクターにおける目標とそのロードマップが明示されている。
○共生と協創に基づいたデンマーク社会
デンマークでは具体的な施策を実施する際、利害関係者に不公平な経済的、人的負担をが生まれないような仕組みを作り、投資などにおいて高利回りが見込めるなどインセンティブに配慮した施策を導入している。
○差別化戦略とイノベーション
小国であり天然資源も少ないという背景から製造業から知識集約型産業にシフト、ものづくりについてはその分野で強い国に任せるという戦略を取っている。国家自体の産業政策として全世界におけるニッチマーケット(隙間市場)に特化した形で革新的な技術の創造を後押ししている。
○国家運営の基盤となる教育システム
現在の知識は20年後には陳腐化、あまり役に立たないとの認識から知識偏重ではなく、知恵を伸ばす教育を基本コンセプトに置いている。答えのない世界で、効率的、公平かつ最善の解決策(ソリューション)を見出す方法論を幼稚園から教育している。

所感
 国家の規模の差、国際関係における大国としての責任度合いの差から考えて日本がこういった戦略をそのまま導入することは難しいとは思うが、教育に関する施策については参考になる部分が多いと感じた。デンマークは技術に特化しものづくりを捨てるという戦略であるが日本においてはそれらを両立させることが可能だと考える。現状、弱いと思われる部分は世界的なマーケットは小さくとも市場を支配できるような「グローバルニッチ」での技術開発であり、そのための起業支援は大きなテーマと言えよう。

コメント [0]  トラックバック [0] 投稿者 : 宮本 俊
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2010年10月6日(水)

[ 活動報告 ]

10月6日。

日本計画研究所(JPI)主催にて表題のセミナーが東京、有楽町にて開催され私も出席、お話を伺って来ました。

講師は経産省 大臣官房 環境経済担当参事官の濱邉哲也氏です。

以下に要旨を報告します。

1.我が国を取り巻く現状について
 我が国の温暖化ガス排出量は全世界の約4%ほどであり、鳩山元首相が声明した25%の削減を達成しても全世界の1%分にしか当たらない。京都議定書での枠組みでは、米国、中国は参加(批准)しておらず、今後の排出予想についても中国、インド、韓国などいわゆるBRICs諸国における排出削減の努力がカギとなる。追加的にCO2排出を1トン削減する努力に要する費用を調査したモデルにおいても中国が0~3$、韓国が21$、アメリカが60$に比べ、日本では既に省エネ技術を駆使した企業活動やエコ商品が普及しておりその費用は460$と諸外国に比べはるかに大きいものとなっている。
 従って日本国内で排出削減努力を行うよりも日本の技術により発展途上国にて排出削減を実施し日本の排出削減分としてカウントすることが合理的な判断と言えよう。
 日本では2009年9月の気候変動サミットにおいて鳩山首相が「すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、2020年までに1990年比25%削減を目指す」ことを表明している。この声明は諸外国が一様にかつ公平に積極的な削減努力を行うことを条件としている。

2.我が国におけるこれまでの取り組みについて
 日本においての温暖化ガス排出状況を見ると基準年となる1990年の排出量12億6100万トンに対し、2008年においてリーマンショックにおける景気後退の影響を受け、前年度比では-6.4%となるも基準年と比べると+1.6%の12億8200万トンとなっている。このような現状の下、森林吸収源対策(3.8%)、京都メカニズム利用(1.6%)を除いても更なる努力により2.2%(2800万トン)の不足に対応しなければならないことになる。分野別に見てみると産業部門においては90年比-13%となっているものの業務その他において+43%、家庭+34%と民生部門における拡大が顕著となっている。
 このような削減に関する取り組みは各業界における自主行動計画によりなされている。自主行動計画とは1997年より各業界(全108業種:2009年6月時点)が業界単位で自主的に目標を設定しその達成に向けて取り組んでいるものであり、政府ではその確実な達成を担保するために関係審議会などによる評価・検証を行っている。この自主行動計画は京都議定書目標達成計画の中でも主な対策として位置付けられている。この取り組みにより産業部門における基準年比-13%という排出削減がなされている。

3.我が国の地球温暖化対策の基本的方向性について
 京都議定書後の排出削減目標を達成するため現在「地球温暖化対策基本法」の成立を目指しておりその法案の概要が平成22年3月に閣議決定されている。その中での中長期目標では。。。
○中期目標:2020年までに温暖化ガス排出量を1990年比で25%削減(前述の前提あり)
○長期目標:2050年までに温暖化ガス排出量を1990年比で80%削減、また政府は2050年までに世界全体の温暖化ガスの排出量を少なくとも半減するとの目標を全ての国と共有するよう努める。
○再生可能エネルギー:一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱など)の割合を2020年までに10%(現在5%)とする
 そしてその重要な具体的な施策として。。。
○国内排出量取引制度の創設
○地球温暖化対策税の平成23年度からの実施に向けた検討
○再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の創設
があげられている。

4.我が国の排出量取引制度:国内統合市場の試行的実施について
 我が国の排出量取引国内統合市場の試行的実施については平成20年10月より制度開始がなされ参加者全体(現在1054社が参加)で我が国排出量の5割、産業部門の排出量の7割をカバーしている。この制度は企業などが削減目標を設定し、その目標以上の削減分(排出枠)や国内クレジット(大企業が技術・資金などを提供して中小企業などが排出削減を行った場合にはその削減分をクレジットとして認証する)などの取引を活用して目標達成を行う仕組みである。 

所感
○経産省の担当からの話であっただけに、産業部門の温暖化ガス削減の努力とその成果をアピールする構成となっていた。産業部門特に大企業においては乾いたタオルを絞り水を出す状況であり更なる削減の効果は難しいと感じた、しかし、国内統合市場の確立により中小企業においての改善余地が大企業の削減にカウントされることは大きな意義があると考えるもの、それは大企業の資金・技術を利用して初めて実現すると考えるため、大企業にはその積極的な取り組みを期待したい。
 一方で削減量に経済価値が生まれてくると企業規模による格差が生まれてくることも予想されるためこれら大企業には自らの排出削減を中小企業を舞台として行うという純粋な制度意図に立ち、中小企業の負担が大きくなることなく技術・資金供与を行う姿勢が重要であると考える。
○今回は経産省の立場での話であったため純粋に環境問題を扱う環境省とのスタンスの違いはおのずと存在すると予想される。今回のセミナーで取り上げられたテーマについて環境省はどう考えているか、言い換えると経産省VS環境省の議論を聞いてみたいと感じた。そこから福井県における温暖化ガス排出量削減に関する具体的な方向性も見出せるのではと考える。

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