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活動報告

2010年10月6日 のアーカイブ

2010年10月6日(水)

[ 活動報告 ]

10月6日。

日本計画研究所(JPI)主催にて表題のセミナーが東京、有楽町にて開催され私も出席、お話を伺って来ました。

講師は経産省 大臣官房 環境経済担当参事官の濱邉哲也氏です。

以下に要旨を報告します。

1.我が国を取り巻く現状について
 我が国の温暖化ガス排出量は全世界の約4%ほどであり、鳩山元首相が声明した25%の削減を達成しても全世界の1%分にしか当たらない。京都議定書での枠組みでは、米国、中国は参加(批准)しておらず、今後の排出予想についても中国、インド、韓国などいわゆるBRICs諸国における排出削減の努力がカギとなる。追加的にCO2排出を1トン削減する努力に要する費用を調査したモデルにおいても中国が0~3$、韓国が21$、アメリカが60$に比べ、日本では既に省エネ技術を駆使した企業活動やエコ商品が普及しておりその費用は460$と諸外国に比べはるかに大きいものとなっている。
 従って日本国内で排出削減努力を行うよりも日本の技術により発展途上国にて排出削減を実施し日本の排出削減分としてカウントすることが合理的な判断と言えよう。
 日本では2009年9月の気候変動サミットにおいて鳩山首相が「すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、2020年までに1990年比25%削減を目指す」ことを表明している。この声明は諸外国が一様にかつ公平に積極的な削減努力を行うことを条件としている。

2.我が国におけるこれまでの取り組みについて
 日本においての温暖化ガス排出状況を見ると基準年となる1990年の排出量12億6100万トンに対し、2008年においてリーマンショックにおける景気後退の影響を受け、前年度比では-6.4%となるも基準年と比べると+1.6%の12億8200万トンとなっている。このような現状の下、森林吸収源対策(3.8%)、京都メカニズム利用(1.6%)を除いても更なる努力により2.2%(2800万トン)の不足に対応しなければならないことになる。分野別に見てみると産業部門においては90年比-13%となっているものの業務その他において+43%、家庭+34%と民生部門における拡大が顕著となっている。
 このような削減に関する取り組みは各業界における自主行動計画によりなされている。自主行動計画とは1997年より各業界(全108業種:2009年6月時点)が業界単位で自主的に目標を設定しその達成に向けて取り組んでいるものであり、政府ではその確実な達成を担保するために関係審議会などによる評価・検証を行っている。この自主行動計画は京都議定書目標達成計画の中でも主な対策として位置付けられている。この取り組みにより産業部門における基準年比-13%という排出削減がなされている。

3.我が国の地球温暖化対策の基本的方向性について
 京都議定書後の排出削減目標を達成するため現在「地球温暖化対策基本法」の成立を目指しておりその法案の概要が平成22年3月に閣議決定されている。その中での中長期目標では。。。
○中期目標:2020年までに温暖化ガス排出量を1990年比で25%削減(前述の前提あり)
○長期目標:2050年までに温暖化ガス排出量を1990年比で80%削減、また政府は2050年までに世界全体の温暖化ガスの排出量を少なくとも半減するとの目標を全ての国と共有するよう努める。
○再生可能エネルギー:一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱など)の割合を2020年までに10%(現在5%)とする
 そしてその重要な具体的な施策として。。。
○国内排出量取引制度の創設
○地球温暖化対策税の平成23年度からの実施に向けた検討
○再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の創設
があげられている。

4.我が国の排出量取引制度:国内統合市場の試行的実施について
 我が国の排出量取引国内統合市場の試行的実施については平成20年10月より制度開始がなされ参加者全体(現在1054社が参加)で我が国排出量の5割、産業部門の排出量の7割をカバーしている。この制度は企業などが削減目標を設定し、その目標以上の削減分(排出枠)や国内クレジット(大企業が技術・資金などを提供して中小企業などが排出削減を行った場合にはその削減分をクレジットとして認証する)などの取引を活用して目標達成を行う仕組みである。 

所感
○経産省の担当からの話であっただけに、産業部門の温暖化ガス削減の努力とその成果をアピールする構成となっていた。産業部門特に大企業においては乾いたタオルを絞り水を出す状況であり更なる削減の効果は難しいと感じた、しかし、国内統合市場の確立により中小企業においての改善余地が大企業の削減にカウントされることは大きな意義があると考えるもの、それは大企業の資金・技術を利用して初めて実現すると考えるため、大企業にはその積極的な取り組みを期待したい。
 一方で削減量に経済価値が生まれてくると企業規模による格差が生まれてくることも予想されるためこれら大企業には自らの排出削減を中小企業を舞台として行うという純粋な制度意図に立ち、中小企業の負担が大きくなることなく技術・資金供与を行う姿勢が重要であると考える。
○今回は経産省の立場での話であったため純粋に環境問題を扱う環境省とのスタンスの違いはおのずと存在すると予想される。今回のセミナーで取り上げられたテーマについて環境省はどう考えているか、言い換えると経産省VS環境省の議論を聞いてみたいと感じた。そこから福井県における温暖化ガス排出量削減に関する具体的な方向性も見出せるのではと考える。

コメント [0]  トラックバック [0] 投稿者 : 宮本 俊
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