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活動報告

2009年8月2日(日)

[ 活動報告 ]

7月30日

 同日から2日間に渡り、自治体議会政策学会主催で「持続可能な社会へ 自治体の再構築 ―自治体計画の見直しと協働」というタイトルのセミナーが開催され、受講してまいりました。

 以下にその講師と力説されたポイントとして重要であると思われる点について簡単にまとめてみました。

第一日目

<第一講義 「持続可能な社会へ -循環型社会を考える」>
講師:石井吉徳氏 東京大学名誉教授

 食料の栽培や流通過程においても石油が不可欠であり、原子力や他のエネルギーにおいても燃料となるウラン採掘や設備建設のための重機利用等において同様に石油がなければなしえない。従って限りある資源である石油がピークを迎えれば食料のピーク、そして文明のピークを迎えることになる。また、石油資源においても量的に何年分あるという議論から、EPR、つまり同じエネルギーを得るのに投入すべきエネルギー(採掘エネルギーや精製エネルギー)の高い低いの議論をすべき、現状においてはEPRの高いいわいる「いい油田」は枯渇してきてEPRの低いものしか残っていない。
 このような環境下、技術開発のみで持続性のある社会を求めることは不可能。現存するエネルギーを浪費することなく「もったいない」という意識で社会作りをしなければならない。

<第2講義 「地域医療崩壊 ―自治体病院から再生を」>
講師:平山愛山氏 千葉県立東金病院 院長

 平成16年の医師臨床研修制度の導入により地方病院への意思の供給源となっていた大学医局自体で医師の確保が難しい状態になってきており、地方へ医師を派遣することは更に難しく、地方の公立病院において医師が激減している状況である。東金病院においても平成15年に23名いた医師が平成18年には10名と半分以下になってしまった。大きな危機感に遭遇した院長は若手医師の進路希望に関するアンケートをとった結果、大学で学位をとるより専門医取得が目的であり、専門医取得は大学病院でより市中病院でを希望し、指導体制や研修プログラムを重要視、就労環境はその次であることが判明した。
 この結果から同病院では専門医として認定されやすい病院を目指し、病院の体制を再構築。医師を確保していった。医師(病院)は町にとって公共的な財産であり、町が医師にとって魅力あることが重要。そのためには
1.病院に頼りになるチームメイトがいること。
2.医師に敬意を払い「お医者さんありがとう」と言ってくれる住民がいること。自分の健康に無頓着で体調が戻らないのを医師のせいにし、コンビニ感覚で病院を訪れるような患者が多い町は医者は育たない。
3.医師をサポートしてくれる行政であり、首長、議会も好意的であること。
4.医師が家族ぐるみで住みたいと思える町かどうか。
を整備する必要がある。

<第3講義 「行財政改革の見直し ―民営化後の点検と協働」>
講師: 後 房雄 名古屋大学大学院法学研究科教授

 指定管理制度における民間委託と民営化を混同している向きがある。例えば保育園の民間委託はその収益も自治体に帰属する代わりにその運営に関わる費用も自治体持ちとなる。一方民営化とは完全に市場競争原理が働き収益と費用がともに運営体に帰属する場合であり民間委託とは異なる。費用負担はある部分において公が行い、そのサービスの提供者を自由に市民が選択できる制度、例えば公的医療制度がそれにあたるがこれらを「準市場」と呼ばれるものである。
 日本は公務員の数が多いという議論があるが、欧米と比べ決して多くない。多いのはいわいる外郭団体と呼ばれるものであり天下り先として非難の多い組織である。これらは民間組織であり行政として、または世論(一般住民感情)として手が出しにくいエリアにある。これらが優先的に仕事を取れる状況は改善すべきであり、仕事の出し方においても結果として得られる住民サービスではなく、そのプロセスの細部まで指定して発注するのでは民間のアイディアは生かされることはない。

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  (写真左:石井吉徳氏 中:平井愛山氏 右:後 房雄氏)

第二日目

<第4講義 「いま問われる地域社会政策」>
講師:栃元一三郎氏 上智大学教授

 地域福祉の領域では老人福祉、児童福祉などについて自治体計画の策定が求められ実際に策定されている。しかしこれらの計画は担当の部局が個別領域の縦割りの中で策定されているにすぎず、連携、広がりのあるものではない。また、シンクタンクなどに委託して策定していることも多く、各県同様な計画になることも多い。これでは自主的な真に地域の福祉向上につながる計画とは言えず地域住民の格差や貧困の解消にはつながっていない。結果的に作らざるを得ないから作る、ガス抜き程度に作る、計画となってしまう。
 こういった計画に形式的にではなく実質的に住民が参加するのみならずPDCAサイクルのD、つまり実施段階においても住民の大きな関与が必要である。つまり、こういった制度設計、計画策定においては中央政府ではなく地方政府がその地域地域に応じた形で地域社会政策のひとつとして捕らえ計画実施見直しをしていくことが重要である。

<第5講義 「農村地域の保全と再生 ―撤退の農村計画」>
講師:一ノ瀬友博 慶応義塾大学 准教授

 全ての農村または限界集落をすべからく住民の生活の場として保全していくことは不可能だと考える。以下のようなゾーニングを行い、それぞれに適合した形で支援策を実施、撤退すべきところは撤退するという基本路線で保全を行うことが重要となる。
(第一次自然保全/再生地域)
奥山的環境で農林業を継続していくのに困難である地域。自然の保全とともに維持が困難な農林地を積極的に第一次自然に戻していく。観光地化や公園化のオプションも考えられる。
(二次自然保全地域)
農村のうち営農上の条件不利地や農地集約で生産性を高めることが難しい地域。粗放的な管理を通した農地の維持や二次自然の保全が管理目標となる。
(農業生産重点地域)
農業の集約化により農業生産性の向上により農地を維持していく地域。農業の担い手確保や法人の参入、農産物の安全性確保、高付加価値型農業への転換が課題となる。
(都市地域)
都市住民はNPOやボランティアなど一次自然、二次自然保全地域の管理を担う主体として役割が期待される。
(一次自然:人間が手を加えないそのままの自然(原生的自然) 二次自然:用水やため池など人間が営農のために整備したものが残る自然、農村風景)

<第6講義 「総合計画の見直し ―持続可能な地域づくりと論点>
講師:山梨学院教授/前多治見市長 西寺雅也

 「持続可能な地域づくり」の問題は限界集落にのみあるのではなく、少子高齢化、人口減少、財政縮小により都市部にも大きな課題となっている。その意味で、全ての政策をせべての住民にすべからく実施することは不可能であり「選択と集中」が重要となる。その意味で、地域づくりに関し、大きなビジョンを描き、すべきこと、すべきではないことを総合計画において明確に規定し、優先順位を明らかにしていかなければならない状況にある。多治見市ではこの認識の下、総合計画を策定、議会に対しては議決事項として取り扱うことを要望したが、すべきではないことの明確化に議会は難色を示し、「行政の共犯者」になることを恐れ拒否された経緯がある。こういった長期計画は時代の流れに即応しずらいという批判もあるが、計画には見直し点検のステップが重要であり、このステップにより克服されると考える。

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(写真左:栃本一三郎氏 中:一ノ瀬友博氏 右:西寺雅也氏)

二日間、朝から夕方までとみっちりのスケジュールで少々疲れましたが、普段、何気なく面しているテーマについてもその裏側の部分にも言及があり、刺激を受ける内容でした。

コメント [0]  トラックバック [0] 投稿者 : 宮本 俊
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